失われた週末
そこにいるは老人の亡霊
夕陽が差し込む部屋のなか
風がカーテンを揺らしてユラユラ
ゆりかごの椅子を揺らしてユラユラ
本を閉じて、頬をつたうは、幾千のなみだ
完全な統治者など、どこにもおらず
また、完全な勝者も敗者すらも、どこにもいない
今ならば、分かるはずのその痛みたち、もういない
あるのは、老いぼれた亡霊…ただひとり…
自分の思い上がりが未来人によって語られつくされている本の中に私はいる
私の愚かな肖像画…とても勇ましく、それでいて悲しい
はるか天に召されても、ページは誰かの手によってつぎつぎ、つぎつぎめくられていく
幾千のなみだ 声にならないなみだ それは川となりはて
もしも、なみだが止まるならば
せめてそのなみだの川の中を私は流されていきたい
せめてそのなみだの川の中で溺れて私も逝かせてほしい