焼けた砂漠に足跡が続いている
高いところから低いところへ
低いところから高いところへ
どこから、やってきたのか…
年老いた旅人に、砂漠の夜は怖いものだと、太陽は告げた…
おかえりなさい…ここは夜にはとても冷え込む…あなたは死んでしまう…
方向をなくした羅針盤
あたりを吹きすさぶ風は
旅人に容赦なく砂を噛ませる
ヨロヨロと、支えを失くした体が倒れ込んだ先におぼろげに見えたオアシス
そこでは、人々は今日を楽しげに踊り…明日を夢見させる…
旅人には関係のないこと…
息も、絶え絶えに薄れゆく記憶…
その中で、私は息子と踊っている…
息子が笑っている…
私が笑っている…
私は笑っている…
息子は泣いている…
薄闇の景色の中に取り残されたまま今にも消えかかっている息子の手をつかんでやりたい…
引き寄せて抱きしめてやりたい…
今ならば、出来る…
たとえ、明日にはこの命、砂に埋もれるならば、一瞬でもこの目にお前の顔を焼き付けて埋もれたい…
だから、もっと近くにきておくれ…
私から離れていかないでおくれ…