あなたの手は聖母の手 差し出されれば今すぐにでもつかみたい
あなたの瞳は聖母の瞳 見つめられれば今すぐにでも恋におちる
この世界にたった一枚の癒し人
きっと、遠い昔あなたは存在したであろう人
人があなたのことをなんて呼んでるか知ってるかい?
ライトにぼんやり照らされて
様々な角度から見るあなたがそんなにも美しいのは
あなたのもつ長い長い歴史のせい？
それとも、一方的な僕の恋心？
心のどこかに訴えかけて
あまりにも儚げで
それを求める人はやまなくて
けれど、ブルジョアのものにはならないで
決してならないで
彼らは、君の微笑みにいいように値札を貼って証明しようとする
近代美術館の中の一番、目のあたるところ
そこに流れゆく静かな時間
こうやって黙ったまま見とれているのは展覧会の絵
この時間の中に取り残されたい
誰が何を思って描かれたのか？時を遡って知るよしもないけれど
これほど美しく描かれたならば、そうとう君に恋してた誰かにちがいない…
長い時間、世界を渡り歩いてようやくたどりついた日本の地
もう何度目の旅…
あなたは何を思うの？
それは聞かないで…
それは今にも深い溜息になる
別れのとき
あなたは静かな微笑みをうかべたまま、暗闇にしまい込まれて、また長い旅へと出るのか…
そうやって、あなたは旅を続けてきた
それは美しくうまれた者の宿命
世界を股にかける旅…やがて古郷へと
さよなら、聖母の癒し人
いつかまた、あなたに出会うその時まで…
