「坊主 バー」の 店主が 描くお寺の 近未来
鈴木賢太郎
東京のJR四ツ谷駅から徒歩10分。雑居ビルの階段を上ると、「檀家制」と書かれた扉が一際存在感を放っている。店に入ると、至るところに飾られた仏具や天井一面に貼り巡らされた写経が目に入り、酒瓶が並ぶカウンターの奥から2人の僧侶が〝参拝客〟を快く出迎えてくれたーー。
1月下旬の金曜日、小誌記者が訪れたのは、知る人ぞ知る夜の駆け込み寺「坊主バー」である。
「仏教には本来、禁酒の戒律があるが、浄土真宗にはそれがない。書物には『お酒をふるまっても構わないから語り合う場を作りなさい』という教えもある。坊主バーの原点はそこにある」
こう話すのはオーナーの藤岡善信さん。日中は埼玉県の寺院で副住職を勤める、浄土真宗本願寺派の僧侶である。日替わり勤務のスタッフもほとんどが僧籍を持ち、曹洞宗や真言宗など宗派はさまざまだ。