人気で 切符入手難 「ラオス 鉄道」 誰が 乗って いる?
高木 聡:アジアン鉄道ライター
中国の「一帯一路政策」のもと、2021年12月に開業したラオス・中国鉄道(LCR)の輸送量は旅客・貨物共に着実に利用実績を伸ばしている。2023年2月1日には中国側の報道で、利用者数が1000万人を突破したと報じられた。
これはラオスの人口(約734万人)を上回る数値であり、そんなに利用者がいるわけがないと思われるかもしれない。実はこの統計にはからくりがあり、ビエンチャン―昆明間トータルの「中老鉄路」の利用者数、つまり中国側の利用者を含んだ数である。
ただ、開業10カ月時点での日本貿易振興機構のレポートでも、「ラオス区間の旅客数(90万人)は決して少ないとはいえない。734万人のラオスと4721万人の雲南省の人口比で単純に比較しても、立派な実績だ」と評価されている通り、ラオス側だけを見ても需要予測以上の伸びを示している。先般、LCRに乗車する機会を得たが、やはりチケットが取れないほどの盛況ぶりだった。実際に誰がそんなに乗っているのか。ラオス・中国鉄道を取り巻く風景と共にレポートする。
*田舎駅が物流の拠点に
筆者は2022年10月、タイから陸路でラオス入りした。タイの首都バンコクから、寝台特急やバスでラオス国境に向かえば1000バーツ(約3870円)前後。座席の快速列車なら300バーツ(約1160円)もあればラオス国境の街、ノンカイに到達できる。どちらも仏教国ということもあり、タイにとって、ラオスは気軽に訪れることのできる隣国だ。
ノンカイからも鉄道で、高速鉄道開業前にはラオス唯一の鉄道駅であったタナレーン駅に向かった。10年ほど前に訪れたときには、どうしてここに駅があるのか?というくらい、荒野にぽつりと佇む田舎駅だったが、現在は駅舎と反対側にドライポート(物流拠点)が建設され、トレーラーがひっきりなしにゲートを出入りしている。駅の終端はかつて、小高い丘に遮られる形で線路が途切れていたが、その丘は跡形もなくなっており、線路はさらに延びている。
現在、旅客営業はタナレーンまでだが、この先にLCRと連絡するビエンチャン南貨物駅が開業し、貨物列車が運転されている。そこでコンテナを積み替えることで、中国―ラオス―タイ3国間の物流ルートが構築された。